羊かぶり☆ベイベー
「……はい。お2人って、本当に仲が良いですよね」
「まぁ、高校からの付き合いだからなぁ。それに、壮が今の俺を作ってくれたようなもんだし」
「え、作ったって、どういう意味ですか」
「実は今のこの店、高校時代からあいつが、ずっと構想練ってたんだ。その相談とか、周囲からの厳しい意見に対する愚痴も、その頃から聞かされてて」
若い頃から、具体的な夢があるなんて、本当に凄いと思う。
それどころか、それを叶えてしまうなんて。
相当な勉強や、努力を積み重ねてきたんだろう。
「その頃、よく壮が言ってくれてたんだ。お前は人の話を聞くのが上手いって。それから卒業して、会社員になったけど、全然ダメだったな。やっぱり人の下で、言われるままに動くのは性に合わないみたい」
「確かに、そんな気がします」
「ははっ、正直だね、みさおさん。否定はしないけど」
「すみません」
「いいえ、良いよ。何気なく、壮に言われたことを思い出して、いろいろ調べて心理カウンセラーに辿り着いたんだ。それで心理学の勉強始めたら、勉強なのに楽しくってさ。気付いたら、夢中になってた。カウンセリングのセミナーとか、講習も全く苦にならなくってさ」
吾妻さんの表情が、生き生きしている。
その瞳は輝いていて、見惚れてしまう程に。
「心理学って、深いなって思った。そりゃ、そうだよね。だって、心って、人の内側の……その更に奥のことなんだから」
私は相槌を打ちながら、カウンセラーは吾妻さんの天職なんだ、とひたすら、そう考えていた。
私が相槌を打つ度に、更に吾妻さんはその私の相槌に笑顔を返してくれる。
この時間に癒されている私。
一方的な吾妻さんの喋りは、心地好い。
「それで実際に、カウンセリング始まって、いろんな悩みを聞いてたら、自分も辛くなることがあったけど……。でも、応援したくなるよね。一緒に考えましょう、って。上手くいったら、一緒に笑いましょう。駄目なら、一緒に泣いてから、また考えましょうって、ね」
吾妻さんにカウンセリングしてもらった経験があるからこそ、どの言葉にも心当たりがある。
そして、あまりにも、優しく笑うから──。