羊かぶり☆ベイベー
「そうやって、今まで、たくさんの人たちが、吾妻さんに救われてきたんですね」
「いや、だから、俺は……」
言い掛けて止まった吾妻さんを不思議に思い、呼び掛ける。
すると、吾妻さんは直ぐに我に返った。
「俺もそろそろ学習しないとね。みさおさんに何度も言ってもらってるから」
「私?」
「うん。謙遜せずに、ちゃんと気持ちを受け取る」
「あ、ああ……それですか」
「うん。俺が些細なきっかけになって、誰かの救いになれてるなら。めちゃくちゃ嬉しいな」
そう言って、くしゃっと笑った。
吾妻さんの笑顔が、あまりにも眩しく思えて、直視出来ない。
カクテルを煽って、誤魔化す。
「そういえば、みさおさん。今日はそれ、何飲んでるの?」
「えっ。え、ええと……。確か……ハナカゼ?」
「え、鼻風邪?」
「お客様。カミカゼ、です」
「あ、ごめんなさい!」
「んふっ。みさおさん、自分が飲んでるのに、覚えてないじゃん。何、飲まされてるか、分かんないんじゃ、安心して飲めないでしょー」