羊かぶり☆ベイベー

おそらく傷つけないだろう、と相手を探って放った私の言葉が正解であれば、穏やかな空気は保つことができる。

それなのに。

今回の場合は、そこに私の本心が無い。

それでも、相手は喜んでくれた。

それに私の心は、痛む。

平和主義者、あらゆる争い事も好まない。

羊かぶりな私。

彼に向かって、もう一度言ってみる。



「…………好き」



確かめるために。

彼の反応を?

いいえ、彼の反応を見た、私の反応を。

すると、ユウくんは一言だけを発して、ニッコリと笑った。



「良かった」



これがまた私を、何とも言えない、それでいて苦い気分にさせる。
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