羊かぶり☆ベイベー

店長は私の顔色を窺うようにして、カウンターを挟んだ向こう側から、私を覗き込んだ。

そして、私が目を腫らしていることに気づいたからか、こちらにちゃんと向き合い、慎重に口を開いてくれた。



「今日は、一人で?」

「はい」

「珍しい。いつもはお友達と来てくれるのに、ね」

「まぁ……私にもいろいろあって」

「そう。いろいろ、ね」



気を遣ってくれているからか、店長の口調が、いつもよりぎこちない。



「今日も、おまかせで?」



私はそれに、頷いて答える。

店長の手慣れた手つきに、カウンター越しに見惚れていた。

この怠惰そうな男性が、お店を一人で立ち上げて、一人で切り盛りしているというのだから、世の中不思議なものだ。

しかし、この怠惰そうな男性は、気配りは小まめである。

だから、人は見た目ではない。

そう信じてみたかったのだが。

そう信じると決めたのに。

駄目だ。

ついさっきの出来事を思い出したら、また涙が込み上げてきた。

しかし、理性がしっかりしているために、まだ泣きじゃくる気にはなれない。

店長にも覚られまいと必死で、嗚咽を押し殺した。
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