羊かぶり☆ベイベー
扉を開けると、カランコロンと控え目な音が鳴る。
いまいち、やる気の無さげでお馴染みの店長と目が合った。
店長は私に、軽く会釈をしてくれた。
「いらっしゃいませ。どうぞ。カウンター席、空いております」
そう言った店長は、カウンター席に掌を差し向け、そこへ促す。
空いているも何も、お客さんは一人しか居ない。
促されたところの、一つ席を挟んだ左隣には、上着を椅子に掛けたスーツ姿の男性の後ろ姿があった。
ここへ来た当初の目的が、思惑通りになり、私は思わず驚いた。
そして、自分を疑った。
──信じられない、本当に私の胸が高鳴ってる。
なかなか動かない私を不思議に思ったのか、店長が首を傾げる。
そして、店長はそこに座っているスーツ姿の男性に話し掛けている。
店長が小声だからか、内容は全く聞こえては来ない。
すると、話し掛けられた男性が、勢い良くこちらを振り返った。
「おっ、みさおさん!」
やっぱり。
私が会いたいと思っていた人だった。