羊かぶり☆ベイベー
ユウくんはうつ向いたまま、頭を掻く。
そして、声がどんどん小さくなっている。
「最近、誘ってもメシすら断られるし……単に、忙しいだけかもしれないけどさ」
悲しげな彼に、もともと感じていた罪悪感が増していく。
「それってぇ……」
少しの間を置いたあと、彼女は顎に手を当てながら、言う。
「もう手遅れなんじゃないですかぁ? 彼女さん、先輩に気が無いのかも!」
「お前が言うな。てか、鬱陶しいから、早く帰れ」
ユウくんが言い放つと同時に、彼女が彼を後ろから抱き締めた。
ユウくんも、覗き見ている私も呆気にとられる。
「お前っ、何して──」
「彼女さんがそんな態度で居るなら私、奪っちゃいますよ? 私の方が先輩を癒せる自信ありますから」
そして、そう言った彼女は、その体勢のままで、顔だけ私の方を見た。
目がしっかりと合う。
2度目だ。
彼女に対して、背筋がゾクッと恐怖を覚えたのは。
私は踵を返し、今度こそ、そこから逃げた。