羊かぶり☆ベイベー
来た道をそのまま戻って、また自分のオフィスに戻ってきていた。
周りを見渡すと、もう誰も残っていなかった。
丁度、良かった。
息は切れているし、心臓が早い。
誰の目も気にせずに、呼吸が出来る。
しかし、まだ怖い。
あの場所を離れたはずなのに、まだ恐怖が私を支配している。
彼女と目が合った、それを思い出して、まだ見られている気さえしてくる。
ああ、嫌だ。
それに、まただ。
「また……逃げ出しちゃった……」
私の馬鹿。
私がユウくんの彼女なんだから、あそこでテレビドラマみたいに「ちょっと! 何してるの!」って飛び出して行っても良かった。
それでも、出ていけなかったのは、きっと私よりもあの子の方が、自信があったから。
今まで私は、ユウくんとはタイプも違うから、分かり合えないなんて決めつけていた。
だけど、彼はそんな捉え方、一つもしていなかった。
私だけだ、そんなこと考えていたのは。