羊かぶり☆ベイベー
画面を恐る恐る見ると、ユウくんからメッセージ。
その内容は、他愛も無い会話の続きだった。
メッセージの頭には「お疲れ様」とあって、気遣いを感じる。
そんな当たり前の、ちょっとしたことで、胸が温かくなるというのだから、不思議だ。
それに、この前ユウくんが例の彼女と話していたときに、私のことを庇ってくれた。
それが、何より驚きだった。
私のことを驚くほどに、真剣に想ってくれていた。
見た目だけの印象で、私が勝手に彼を遠ざけようとしていた間にも。
私だけが、向き合えてなかった。
あまりに失礼だった。
今度こそ、気持ちが走り出すのが、自分でもわかる。
名刺に書かれた電話番号を打ち込んでいた。
とうとう呼び出し音が、鳴り始める。
規則的な音につられて、私の心音も大きく早く鳴る。
音が途切れると、名刺の主の声がした。
『──カウンセリングルーム あづまです』
「あっ」
私には、分かり切っていたはずの相手に、声が上擦る。
相手は、私がよくよく知っている人物。
──本当の本当に、吾妻さんの声が聞こえる……。
とても恥ずかしい。
車の中で、1人赤面する。
「あ、あのっ」
『はい。どうされましたか?』
未だ慌てる私とは、正反対に落ち着いた口調で、優しく声をかけてくれる。
吾妻さんは、私に気付いているのだろうか。
『大丈夫ですよ。ゆっくりで、あなたのペースで構いませんよ』
どうやら、向こうは気付いていないらしい。
──それでも、いいや。その方が、むしろ都合が良い。
カウンセリング。
先程、次の言葉が出なかったのは、焦っていたのもあった。
でも、もう一つの理由があった。
そっと息を吸い込む。