羊かぶり☆ベイベー
「宣戦布告、されたんでしょ」
「あ、まぁ……でも、そんなに気にすること──」
「女性はこういうことには、特に敏感で陰湿なところがあるから。本当に気をつけてよ」
思わず、何も言えなくなった。
それはきっと、吾妻さんが少し強めに訴えてきたからだ。
その数秒後に、ようやく恐怖心が芽生えた。
吾妻さんのせいではなく、あの日の、あの女の子の眼光をまた思い出したから。
「わ、わかり……ました」
吾妻さんは私の返事を聞くと、一度頷いた。
「本当に……心配してんだからね」
「……あ、ありがとうございます」
「よし! じゃあ、今日はここまで。また次回ね」
私は、お辞儀をして部屋を出た。
仕事が終わり、人が減った、やや静かな会社の廊下は、少し寂しかった。
あれだけ、吾妻さんと賑やかにいろんなことを話したからかもしれない。
何故だか、浮かれていた。
興奮により、顔が火照ったままだ。
駐車場に向かう間も、ずっと熱は冷めそうになかった。