羊かぶり☆ベイベー
私は、汐里の視線が向く方を確かめた。
そして、確かに私にもその汐里曰く「イケメン」の人物が見えた。
思わず、肩が跳ねたのは、おそらく私だけだと思う。
その中心に見えたのは、私の見間違いでなければ、あの人だった。
驚いて少しの間、私は固まってしまった。
「吾妻さ──」
驚きが声になってしまったとき、不意にあの人がこちらを向いた。
明らかに、目が合う。
ああ、馬鹿。
さっさと前を向いて、湯気の立つ素敵なおろしハンバーグ定食を受け取ってしまえば良かったのに。
慌てて、体ごと顔を逸らしても、後の祭。
出来れば、気付かれたくなかった。
だって、社内の人には、この関係をあまり知られなくない。
「見えた? ね、かなりイケメンじゃない?!」