羊かぶり☆ベイベー
嬉しそうにはしゃぐ汐里に、愛想笑いをしておく。
私にとっては知り合いなものだから、何と返事をしたら良いか分からない。
非常に複雑な心境になる。
少し思い悩んでいると、汐里が騒がしくなった。
「ちょっ、みさお! みさお!」
「もう、何──」
「どうも、みさおさん」
肩に誰かの手がのせられ、小さく悲鳴が上がる。
恐る恐る振り返ると、そこには案の定、吾妻さんの姿が。
「これから、ランチですか?」
「あ、はぁ……」
先程、汐里に向けていた愛想笑いを、今度は吾妻さんに向ける。
私の反応に、一瞬だけ困り顔を見せた吾妻さんは、直ぐに微笑んでみせた。
その気遣いに、心が痛む。
「突然、話し掛けて迷惑だったね。ごめん、ごめん」
「あ、いえ、そういうことじゃ……」
「俺にまで、そんなに気ぃ遣わなくていいよ。じゃ、またね」
吾妻さんは手を振って、その場を去って行った。
──気を遣ってくれたのは、吾妻さんの方なのに。
申し訳なさから、その背中を目で追ってしまう。
「ちょっと、ちょっとぉ?」
汐里が、私を怪しげに見た。