バレンタイン・フェルマータ
そんな話を思い出しながらピアノに向かっていた、2月14日の夜。
突然、何の前触れもなく、右前方から異音がした。
弦が切れたのだ。
まさか。
現実が信じられず、しばし呆然としてしまった。
奇跡ってものは実際体験すると、まず戸惑うものらしい。
で、次に笑えてきた。
ああそうか。
今までのコンクールやコンサートで運とも奇跡とも縁がなく、地味なピアニストと呼ばれてきたのは、この時のためだったのか。
僕は笑いをおさめて、電話を手にした。
彼女がまだ事務所にいるように祈りながら。
fin.
突然、何の前触れもなく、右前方から異音がした。
弦が切れたのだ。
まさか。
現実が信じられず、しばし呆然としてしまった。
奇跡ってものは実際体験すると、まず戸惑うものらしい。
で、次に笑えてきた。
ああそうか。
今までのコンクールやコンサートで運とも奇跡とも縁がなく、地味なピアニストと呼ばれてきたのは、この時のためだったのか。
僕は笑いをおさめて、電話を手にした。
彼女がまだ事務所にいるように祈りながら。
fin.