玻璃の向こう
「気を悪くしたら申し訳ないけど、今の仕事にやりがいってある?」

彼のような華やかなデザイナー職からすれば、当然の疑問だろう。ひたすらデザイナーとクライアントの意向をもとに図面を仕上げる作業は、裏方でしかないし評価も得にくい。

「これが意外とっていうか、面白いことが多いんです」

「面白い」と圭介がつぶやきながら、眉をちょっと持ち上げる。

「デザイナーさんのイメージとか、クライアントさんの要望を汲みとって具体化しようと思うと、頭をひねるし、創造性がまるっきりないわけじゃないんです。図面が仕上がると達成感があるし、コンペで採用されたって聞くと純粋に嬉しいです」

「なるほどね」
腑に落ちたという表情だ。

「それになんていうか、わたしらしいのかなって」

圭介がけげんそうな視線を向けてくる。
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