玻璃の向こう
美しいデザインを創造して具現化できる喜びは、何ものにも変えがたいのだろう。

選ばれた者だけが到達できるその頂きに、自分は手をかけることさえできなかった。
嫉妬を感じないかと聞かれると、難しいところだ。

デザイナーの描いたデザイン画を見て、ときどきため息さえこぼれることがある。圧倒的なクリエイティビティと才知が、平たい白い紙の上にほとばしり輝いている。それは太陽のようにまばゆい存在だ。

そして、花は太陽の恵みを受けて育つのだから。ひっそりとでも咲いているんだと、そう思っている。
圭介に仕事を「面白い」と言ったのは、嘘ではない。

折をみたように、テーブルにアンティパストの皿が運ばれてくる。
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