玻璃の向こう
「これ・・」
小さく息を飲んだ。

ガラスのコップがふたつ、中に収められている

「プレスガラスのコップ」と圭介が告げる。
「奥飛騨に、プレスガラスの作品作りをしている工房があるって知って。そこのものなんだ」

柔らかな色をした厚手のグラス。小さな気泡がぷわりとその肌の中に浮いている。祖母の家にあったものとは、もちろん違う。新しいコップなのに、なぜだか懐かしい。

「どうして七村さん・・・これ」
彼の意図が読めず、まごつく。

圭介がコップにペリエを注いで、ひとつを一花の前に置く。

「ちょっと前、僕の提案したデザインが、クライアントに採用されてね。小さな美術館なんだけど」

「おめでとうございます」
反射的に口にする。
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