玻璃の向こう
制作部はデザイン画をもとに図面を仕上げるのが主な業務だ。
デザインチームとの関わりは深い部署だが、圭介は主にデザインラボのスタッフと組んで図面を仕上げていた。

妙に心に引っかかる回答だった。整った手書きの字は丁寧に書かれている。
適当に回答したわけではない。

話を聞いてみようかと、ふと思った。
ダメでもともと。ヒントが見つかれば儲けもの、くらいなのだから。

奥村一花の第一印象は “緊張しているな” だった。
自分がなぜ呼び出されたのか分からず、アンケートに何か変なことを書いてしまったかと不安げな様子で。
生真面目な性質がうかがえて、好ましかった。

人目をひく派手やかなタイプではないが、品よく整った顔立ちをしている。
いちばんのチャームポイントは、茶色がかった大きな瞳だろう。まばたきを忘れてしまったかのように見開いて。
口もとは緊張に引き結ばれている。
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