玻璃の向こう
「出よっか」あきらめたように、彼がつぶやく。
「こうしていると、あっという間に一日過ぎちゃいそうだから」

「うん」
その気持ちは一花も同じだ。意思の力を総動員して、ようやく圭介の腕の中と、そしてベッドから抜け出した。

ローブを羽織ってキッチンへ向かう。
冷蔵庫から、ペリエとライムを出した。次に食器棚の扉を開けて、指は一瞬迷い、やっぱりいつものコップを選びだす。

ぽってりと、手にたしかな重みを感じる、プレスガラスのコップ。
並べたふたつのコップに、氷を入れてペリエを注ぐ。トン、とライムをナイフで切り分け、キュッと果汁をしぼり入れる。
シュワワワ・・・と炭酸が弾ける音と、ライムの香気が耳と鼻を刺激する。朝の音、そして朝の香りだ。

カチャカチャとマドラーで音と香りをかき混ぜる。
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