玻璃の向こう
このミーティングルームをデザインしたのも、もちろんデザイン部だ。

カラーは白、黒、赤で、ラインは曲線で統一され、モダンでスタイリッシュでありながらやわらかい雰囲気の空間になっている。

七村圭介というひとは、そんな空間が実によく似合った。
いや、とすぐに打ち消す。彼ならばはどんな場所、どんなシチュエーションでも映えることだろう。

秀麗な面差しを初めて間近にしてそう感じた。この容貌が、彼の声望をいっそう高めていることは間違いない。
「天は何物も与えるのね」と先輩がため息まじりに七村圭介を評していたのを思い出す。

「花の顔(かんばせ)」という古風な形容詞が頭をよぎる。美しい、ひとだ。
一花とてデザイン会社に勤める者の端くれ、美しいものには心が揺さぶられる。
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