玻璃の向こう
「先日協力してもらったアンケートのことで話を聞かせてほしくて」

テーブルに置かれたプリントを、長い指ですっとこちらに滑らせる。一花が回答したアンケートのようだ。

この設問、と指でしめされる。

[ Q:美しいと感じるものを一つだけあげてください ]

[ A:祖母の家にあった、プレスガラスのコップ ]

そういえばそんな回答をした。

プレスガラス、と七村圭介が平坦な声で発音する。
「ガラスに造詣が深くないから、プレスガラスのことを知らなかったもので。なんだろうって」

率直な物言いを好ましく感じた。とはいえ、知らないことを知らないと言えるのは、素地に自信があるからなのだろう。

「頭に浮かんだことを、そのまま書いてしまって・・・」

プレスガラスは、日本では大正〜昭和初期に多く作られたガラス製品だ。押型ガラスとも呼ばれ、溶かしたガラスを雄型と雌型で押して形作られる。
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