玻璃の向こう
ガラス細工という言葉から連想するような、繊細さや透明感、涼やかさとはずいぶんと異なる素材感をもっている。
表面になるべく触れない現代の製法とは真反対なわけだから、厚手で表も裏もうっすら曇っている。
よくいえば素朴、悪くいえば野暮ったい。それが一般的なプレスガラスの評価だ。

「一部では昭和レトロなんていわれて愛好されているみたいだけど・・・どうして奥谷さんはプレスガラスのコップをあえて、美しいと———?」

こちらをひたと見つめる彼の視線に、一瞬のどが締めつけられて息が苦しくなった。鋭さを感じさせる切れ長の瞳の印象を、長い睫毛がやわらげている。
ふう、落ち着けわたし、とゆっくり息をする。
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