玻璃の向こう
「一般的にいわれる美しいもの、とはちょっと違うかもしれませんけど・・・」
思うことを素直に話せばいい。なにか悪いことをしてるわけじゃないんだから。

「幼いころ、祖母の家にあったんです。もちろん当時は、プレスガラスなんて言葉は知らなかったんですけど」
口にすると、自然と情景が浮かんで広がってくる。

———祖母の家には、毎年夏休みになると遊びに行っていたんです。遊び疲れて汗をかいて家に戻ると、祖母がガラスのコップにたっぷり麦茶と氷を入れたものを出してくれて。ごくごくのどを鳴らして冷たい麦茶を飲んで。
子どもの手には大きいコップで。ガラスなのに、素朴でどこか温もりが感じられるんです。手ざわりがちょっとざらっとしていて。

飲み終わると、しげしげとコップを見つめたりしていました。
厚手なので中に細かい気泡が入っていたり、コップを通すと、向こうがわの景色が少しゆがんでぼんやりするのが面白かったんです。
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