bitterlips
そんな、野良猫みたいな生活をしていたある日
どこから匂いをかぎつけたのか
俺の前に、梓が姿を現した。
梓は、世間で言う“幼なじみ”。
そして俺の“恩人”でもある。
「快斗、歌いたいんだろ?」
東京の街中で
梓はギターをスッと出した。
そして、俺に笑顔を向けるのだ。
「メンバーはすぐ見付かるって」
「梓……マジ?」
「バンドマンを伝っていけばすぐだよ」
『快斗の歌声が聞きたい』
野良猫の前に現れた野良犬は
妙に俺に優しかった。
じいさんが死んだってことで、同情して優しくなってるのもあるかもしれないが
梓は、そんなヤツじゃない。
俺の傷をえぐらないように
していたのだ。