月杜物語
幻影の影。
[幻影の影]

西行寺花蓮とあたしはSF小説の行方について話し合う。月杜のアパートで。

たしかに気にしていたのだ。

西行寺花蓮がいう。
「SFは進歩という考え方から抜け出せなかったんだよ。目の前にある風景を観るべきだ。

イデア界に近くある星や数学、枢軸時代の教えは太古から延々と続いているじゃないか。

同時にイデアの影たる世界は流転し変転し移り変わる。

サンドイッチやコーヒーさえも過去の文明の時代には無かったのだよ」

「サンドイッチや焼き肉は美味でしたよね」

「昨日のパーティーか。
そうだな。たしかにパーティーの料理は美味だ···。SF小説もいずれは復権するかもしれないな」

「それはどういうときなのでしょうか」

「哲学が完成するときは一度目は悲劇として。
二度目は喜劇として。と述べた哲学者もいたそうだが、未来とは開かれていて分からないのだよ。
さ、サンドイッチでも食べようじゃないか」

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