もう一度〜あなたしか見えない〜
プロロ-グ
私達がホテルを出ると、1台の車が、前に止まっているのが見えた。するとドアが開き、1人の男性が降りて来た。


(えっ?)


それが誰であるか気づいた私は、思わず息を呑んで、立ち止まった。隣の彼も、私の様子から、その人物が誰であるか、悟ったようだった。


凝然と立ち尽くす私達に、近づいて来たその人は、横の彼には、目もくれず、私を真っ直ぐに見た。


「今まで苦しめてすまなかった。」


そう言うと、その人は私に頭を下げた。そのあまりに意外な言動に私も彼も言葉もない。


「離婚しよう。」


そう言い残して、身を翻したその人は、車に乗り込み、1人去って行った。
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