もう一度〜あなたしか見えない〜
「ご主人に怒鳴られましたよ。そんないい加減な気持ちで、俺の妻を抱いたのかって。」


「えっ?」


「本気だから、本気で愛したから抱いたんじゃないのか。幸せにするつもりで抱いたんじゃないのか?なのに、妻を見捨て、会社からも逃げ出すなんて、卑怯にも程がある。俺は貴様を絶対に許さん。どこまでも貴様を追い詰め、トコトン制裁する。凄まじい剣幕でした。」


うなだれながら、力なくつぶやくように彼は言う。


「僕は本気でしたよ、ご主人から先輩を奪い取りたい、そう思ってました。だけど・・・先輩の心は結局はご主人にあった。それがわかっていても、僕はあなたから離れられなかった。あなたが好きだった。」


彼の切ない気持ちが伝わって来て、私は涙が止まらない。


「僕の負けです、どんな制裁でも受けます。会社は辞めますが、逃げも隠れもしません。だから、早くご主人のもとに帰ってあげて下さい。ご主人ほど、先輩を愛してる人はいません。申し訳ありませんでした。」


そう言って、私に深々と頭を下げた彼を私は思わず抱きしめていた。


「謝らなければならないのは私の方。君の思いにつけ込んで、楽しんでました。ごめんなさい、本当にごめんなさい。」


自分の犯した罪の重さを今更ながら、ヒシヒシと感じざるを得なかった。
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