もう一度〜あなたしか見えない〜
私が自宅に戻ったのは、9時過ぎのことだった。家に灯りはなく、夫はまだ帰宅していないようだった。
自宅に入った私は、夕食の準備に取りかかることにした。夫が箸をつけてくれるかどうかはわからない。だけど、そうやって夫の帰りを待とう。今の自分に出来ることは、それしかないのだ。
そう思って、キッチンに向かおうとした時、食卓に何かが置かれているのに気付いた。見るとそこには、手紙と1枚の名刺が。胸騒ぎがして私は、急いでその手紙を広げる。
『お帰り。昨日も話した通り、僕はこの家を出ることにする。今後のことは、この名刺の弁護士さんを通じて話をしていくことになるので、よろしく。』
途中で文字が涙で霞んだ。ようやく読み終えると、夢中で携帯のボタンを押した。着信拒否されてるかと思ったが、ツーコールであっさりと夫の声が聞こえて来た。
『もしもし。』
「もしもし、今どこなの?」
『ビジネスホテルだ。まだ新しい住処が決まってないからね。しばらくはホテル暮らしだな。君は今、家なのか?』
「うん。」
『そうか、奴はやっぱり逃げたのか・・・。』
「違う!違います。私は、私は自分の意思でこの家に帰って来たの。ここが私の家だから、あなたと私の家だから。だから、お願い。あなたも帰って来て。このまま別れるなんて嫌。せめて、もう1度話をさせて。いきなり弁護士なんて、いくらなんでも酷すぎる。とにかく帰って来て、もう1度、お話しさせて。」
懸命に訴える私の声が、虚しく1人の部屋に響く。そしてその声を聞いているのかと思うくらい、電話口からの反応はなかった。
重苦しい沈黙、しかし私は待った。夫が言葉を発してくれるのを。何分待ったのだろう、ようやく夫の声が聞こえて来た。
『すまない、もうその家に帰るつもりはない。君と2人で話すことも出来ない。』
「!」
『おやすみ、明日も早いんだろ?早く休んだ方がいいよ。』
「待って!」
しかし無情にも通話は切れる。涙が止まらなかった。
自宅に入った私は、夕食の準備に取りかかることにした。夫が箸をつけてくれるかどうかはわからない。だけど、そうやって夫の帰りを待とう。今の自分に出来ることは、それしかないのだ。
そう思って、キッチンに向かおうとした時、食卓に何かが置かれているのに気付いた。見るとそこには、手紙と1枚の名刺が。胸騒ぎがして私は、急いでその手紙を広げる。
『お帰り。昨日も話した通り、僕はこの家を出ることにする。今後のことは、この名刺の弁護士さんを通じて話をしていくことになるので、よろしく。』
途中で文字が涙で霞んだ。ようやく読み終えると、夢中で携帯のボタンを押した。着信拒否されてるかと思ったが、ツーコールであっさりと夫の声が聞こえて来た。
『もしもし。』
「もしもし、今どこなの?」
『ビジネスホテルだ。まだ新しい住処が決まってないからね。しばらくはホテル暮らしだな。君は今、家なのか?』
「うん。」
『そうか、奴はやっぱり逃げたのか・・・。』
「違う!違います。私は、私は自分の意思でこの家に帰って来たの。ここが私の家だから、あなたと私の家だから。だから、お願い。あなたも帰って来て。このまま別れるなんて嫌。せめて、もう1度話をさせて。いきなり弁護士なんて、いくらなんでも酷すぎる。とにかく帰って来て、もう1度、お話しさせて。」
懸命に訴える私の声が、虚しく1人の部屋に響く。そしてその声を聞いているのかと思うくらい、電話口からの反応はなかった。
重苦しい沈黙、しかし私は待った。夫が言葉を発してくれるのを。何分待ったのだろう、ようやく夫の声が聞こえて来た。
『すまない、もうその家に帰るつもりはない。君と2人で話すことも出来ない。』
「!」
『おやすみ、明日も早いんだろ?早く休んだ方がいいよ。』
「待って!」
しかし無情にも通話は切れる。涙が止まらなかった。