もう一度〜あなたしか見えない〜
⑨
「おい。」
物陰から野太い声が。嫌だなぁと思いながら、関わり合いにならないように、足を速めると
「無視する気か。」
との声の追い打ちが。まさか私に呼び掛けてるの?と恐る恐る振り返った私は、そのまま立ち尽くす。だってそこに立っていたのは・・・。
「あなた・・・。」
そうだ、紛れもなく、私が恋焦がれて来た人の姿が。でも・・・。
「久しぶりだな。」
と私を見ているその人は、私が知っている、私の心の中にいるあの夫の姿には程遠い。顔には無精ひげ、着ている服はヨレヨレ。一瞬、よく似た別人かと思ったけど、私があの人を見間違えるはずはない。だけど・・・。
「お前に話がある。一緒に来てくれ。」
周囲にいた何人かの顔見知りの社員が心配そうに私を見る。知らない人から見れば、今のあの人は不審者にしか見えなくても、不思議はない。
そんな彼らに大丈夫と言うように頷いて見せると、私は、元夫の後を追う。
「待って、どこまで行くの?」
私が付いて来てるのを確認しようともせず、早足で歩く元夫を、私は懸命に追う。昔は私が遅れないように、いつも気を遣ってくれていたのに・・・。
「うるさい連中がいたからな。もうこの辺でいいだろう。」
オフィス街の死角のようになっている、人通りの少ない場所に着くと、元夫はようやく足を止めた。
「いくら電話しても、出なかったからな。それで仕方なく、会社の前で待たせてもらった。」
「連絡くれてたの?え、まさか・・・。」
度重なる公衆電話からの着信、あれはこの人からのものだったのか・・・私はようやくこの時、気付いた。
物陰から野太い声が。嫌だなぁと思いながら、関わり合いにならないように、足を速めると
「無視する気か。」
との声の追い打ちが。まさか私に呼び掛けてるの?と恐る恐る振り返った私は、そのまま立ち尽くす。だってそこに立っていたのは・・・。
「あなた・・・。」
そうだ、紛れもなく、私が恋焦がれて来た人の姿が。でも・・・。
「久しぶりだな。」
と私を見ているその人は、私が知っている、私の心の中にいるあの夫の姿には程遠い。顔には無精ひげ、着ている服はヨレヨレ。一瞬、よく似た別人かと思ったけど、私があの人を見間違えるはずはない。だけど・・・。
「お前に話がある。一緒に来てくれ。」
周囲にいた何人かの顔見知りの社員が心配そうに私を見る。知らない人から見れば、今のあの人は不審者にしか見えなくても、不思議はない。
そんな彼らに大丈夫と言うように頷いて見せると、私は、元夫の後を追う。
「待って、どこまで行くの?」
私が付いて来てるのを確認しようともせず、早足で歩く元夫を、私は懸命に追う。昔は私が遅れないように、いつも気を遣ってくれていたのに・・・。
「うるさい連中がいたからな。もうこの辺でいいだろう。」
オフィス街の死角のようになっている、人通りの少ない場所に着くと、元夫はようやく足を止めた。
「いくら電話しても、出なかったからな。それで仕方なく、会社の前で待たせてもらった。」
「連絡くれてたの?え、まさか・・・。」
度重なる公衆電話からの着信、あれはこの人からのものだったのか・・・私はようやくこの時、気付いた。