自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
セシリアは、年に数回、こうして青空マーケットを訪れ、密やかなる自由と賑やかさを楽しんでいた。
「あの、すみません。サクランボを袋一杯にいただけますか? 赤くてとても可愛らしいと思ったの」
セシリアが果物売りに声をかければ、中年の男は「あいよ!」とすぐに応じて、紙袋に溢れんばかりのサクランボを入れてくれた。
「オレンジをひとつサービスしよう。王女様……あ、いやいや、間違えた。お嬢ちゃんはサクランボよりずっと可愛いから、特別だよ」
豪華なドレスではなく、庶民的な服装で、セシリアはここにいる。
それは、王女だと知られたら身の危険があるからではなく、買い物客や店の者たちがかしこまり、楽しげなマーケットの雰囲気を台なしにしたくないためだ。
しかし、お忍びのつもりで来ていた彼女に、果物売りの男は、うっかり“王女様”と呼んでしまい、慌てて言い直していた。
どうやらセシリアの変装は見破られていて、王女が気楽に買い物を楽しめるようにと、逆に気を使われていたらしい。
そのことを恥ずかしく思い、頬を染めたセシリアは、代金を支払ってサクランボとオレンジを受け取ると、お礼を述べて、そそくさと果物売り場から離れた。
「あの、すみません。サクランボを袋一杯にいただけますか? 赤くてとても可愛らしいと思ったの」
セシリアが果物売りに声をかければ、中年の男は「あいよ!」とすぐに応じて、紙袋に溢れんばかりのサクランボを入れてくれた。
「オレンジをひとつサービスしよう。王女様……あ、いやいや、間違えた。お嬢ちゃんはサクランボよりずっと可愛いから、特別だよ」
豪華なドレスではなく、庶民的な服装で、セシリアはここにいる。
それは、王女だと知られたら身の危険があるからではなく、買い物客や店の者たちがかしこまり、楽しげなマーケットの雰囲気を台なしにしたくないためだ。
しかし、お忍びのつもりで来ていた彼女に、果物売りの男は、うっかり“王女様”と呼んでしまい、慌てて言い直していた。
どうやらセシリアの変装は見破られていて、王女が気楽に買い物を楽しめるようにと、逆に気を使われていたらしい。
そのことを恥ずかしく思い、頬を染めたセシリアは、代金を支払ってサクランボとオレンジを受け取ると、お礼を述べて、そそくさと果物売り場から離れた。