自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
「三つ目とは、なにについて仰っているのですか?」と彼女が慌てて尋ねれば、それに答えるのは国王ではなくクロードである。


「もちろん、イザベル嬢の願いを歌劇場で叶えてあげたことについてです。ご友人を喜ばせただけではなく、オペラのあり方について考え直すきっかけを皆に与え、劇団長にも深く感謝されたそうですね。ご立派でございます」

「ど、どうして、クロードさんがそのことを……」


薄茶色の瞳を弓なりにして微笑むクロードに、セシリアが震えそうな声で尋ねれば、彼は黒い騎士服のポケットから一通の白い封筒を取り出した。

「一時間ほど前に届いた私宛の手紙です」と説明した彼は、差出人の氏名をセシリアに見せる。

そこには、イザベルの名前が書かれていた。


「あっ……」


その封筒を見て、セシリアは全てを理解した。

どうやらイザベルがクロードに手紙を書いて、歌劇場でのサプライズを教えてしまったようだ。

それは決して意地悪ではなく、よかれと考えての行為だと思われる。

三日前の別れ際にイザベルから、『今日のお礼は必ずさせてもらうわ』『あなたを喜ばせたいのよ』と言われたことを、セシリアは思い出していた。

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