自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
悲痛な声で叫ばれて、クロードは目を見開き、驚いている。

彼から顔を背けたセシリアは、ドアに駆け寄って手荒に開け、廊下に飛び出した。


(クロードさんのせいじゃないのに、八つ当たりしてしまったわ。ごめんなさい。でも悲しくて、耐えられないの……)


苦しさから逃れようとするかのように、セシリアは息を切らせて廊下を走り、南棟までやってきた。

すると、「セシリア様、お待ちください!」という声が後ろに小さく聞こえ、彼女は肩を揺らした。

クロードが追ってくるとは、思わなかったからだ。


セシリアの泣き顔を見た彼は驚き心配し、国王に退室を願い出てから、少し遅れて執務室を飛び出したのだと思われた。

セシリアは三階の自室に戻るため、階段に向かっていたのに、その前に追いつかれてしまいそうである。


(今日はもうお話したくないのよ。きっと大泣きして、クロードさんを困らせてしまうもの……)


捕まるまいとするセシリアは、廊下の角を曲がってすぐの両開きの扉を開けると、その中に飛び込んだ。

長い廊下にはドアがいくつも並んでいるから、きっとセシリアがどこに隠れたのか、彼はわからないことだろう。

もしかすると、そのまま廊下を走り、東棟まで探しに行くかもしれない。

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