自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
「そんなに難しく考えなくてもよい。まずは周りをよく見なさい。そうすればおのずと、助けを必要としている者を見つけることができるだろう」

「はい、お父様……」


セシリアが父親に反論したことは、ただの一度もない。

今も、それを迷っていたわけではないと言えずに、困り顔で頷いた。

「お下がり」と言われたので、スカートをつまんで腰を落とし、礼儀正しく退室の挨拶をしてから、執務室を後にする。

そして、廊下を歩きながら、『どうしたらいいの……』と心の中で呟くのだ。


ハッキリと意見できない自分が嫌になる。

けれども、それが彼女の性分であり、貴族女性としては大人しく控えめで、品のある淑女として褒められるものなのかもしれない。


思い悩むセシリアが、自室へと引き返し、南棟の三階の廊下に差し掛かったら……奥に母の姿を見つけて立ち止まった。

母の前には、身を縮めてペコペコと頭を下げる若いメイドがいて、どうやらなにかをミスしたらしく、叱られているところらしい。

< 25 / 223 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop