自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
彼女としては、もちろんクロードの凛々しい訓練姿を見たくてたまらないけれど、ツルリーと一緒に部屋を出ていけば、カメリーの想いを踏みにじることになる。

カメリーの心を傷つけてしまうのではと、それを心配していた。


(どうしましょう……そうだわ!)


打開策を閃いたセシリアは、「ちょっと待ってね」と双子から離れて、壁際のキャビネットの前へ行く。

その上段の引き出しの鍵を開け、中にしまわれていた革製のポーチから五枚の銀貨を取り出すと、侍女たちのもとへ戻った。

そしてニッコリと作り笑顔を浮かべてカメリーの手を取ると、五枚の銀貨を握らせる。


「これで見逃してもらえないかしら……?」


カメリーの趣味は貯金である。

侍女の給金を、洋服やアクセサリーの購入にパッパと使ってしまうツルリーとは逆に、彼女は着飾ることに興味がないようで、ほとんど全てを溜め込んでいる。

カメリーの部屋には、頑丈な鍵付きの小型金庫が置かれていて、寝る前に必ず中を点検し、ニタニタと笑いながら貯金額を数えているそうだ。

『不動産を購入して、家賃収入で暮らしていくのが夢なんですって』と、以前ツルリーがヒソヒソと教えてくれたことがあった。
< 35 / 223 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop