自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
それを思い出したセシリアは、カメリーの機嫌を損ねずに、クロードを見にいくにはどうしたらいいのか……と考えて、銀貨を渡したのだ。

その方法は、どうやら間違えていない様子。

滅多なことでは笑わないカメリーが、満面の笑みを浮かべて、ドア前からサッとどいてくれた。


「そういうことなら、仕方ありません。お茶の時間は、三十分遅らせるよう手配いたしますので、どうぞ騎士団長を覗きに行ってらっしゃいませ」


その反応に、セシリアは思わず苦笑いしてしまう。

期待していたとはいえ、予想以上にすんなりと許してもらえたため、いささか拍子抜けしていた。


(カメリーらしいと言えば、そうなのだけど、とても現金な反応ね……)


ともあれ、笑顔で送り出してくれるのはありがたく、セシリアとツルリーは、心置きなく西棟まで急いで移動した。

目指すは尖塔のてっぺんにある見張り台で、そこから兵舎や馬場、訓練場がよく見えるのだ。


薄暗い螺旋階段を五階分の高さまで上ったふたりは、見張り台に出た。

そこは石造りの壁と屋根はあるが、四方に開けられた窓にガラスははめ込まれていないため、屋外と変わらず、強めの風が吹き抜ける。
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