自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
クロードは最初は目を瞬かせて驚いた様子であったが、クスリと笑うと、大人の余裕を感じさせる声で『光栄です』と返事をした。

『私もセシリア様を敬愛しております。あなたが成人され、どちらかへ嫁がれるまでは、騎士として、近くでお守りいたします』

それが彼の答えであった。


当時、二十二歳の彼には、十三歳の少女の告白は、少しも響かなかった様子。

ただの憧れであり、本物の恋ではないと思われたのか。

それとも王女という身分の高さから恋愛対象にしてくれなかったのかはわからないが、どちらにしてもセシリアは、優しく丁重にふられてしまったのだ。


想いを告げたのは四年前の、あの一度きり。

大人になった今は、少女の頃のように、諸々の事情を鑑みない素直な勇気を出すことはできず、もう二度と告白はできないと、セシリアは思っている。


(ただ、この先もずっと、クロードさんをお側で見ていたい。だから、他国へ嫁ぎたくはないの……)


それから二十分ほど、クロードの勇姿を感傷的な気分で見つめていたセシリアであったが、ふと意識が逸れた。

先ほどから視界の端を、チラチラと横切る者がいるのだ。

その者に視線を向ければ、庭師のジャルダンであると気づく。
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