自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
彼は三十四歳で、大勢いる王城庭師の中では、中間の地位にいると思われる。

優秀かと言われると、そうではなく、後輩庭師に指導されている姿を、セシリアは何度か見たことがあった。

部屋に飾りたくて頼んだ花の種類を、間違えられたこともある。

けれども、真面目で一生懸命、庭づくりが好きだという情熱は人一倍あるようで、その点は好ましく感じられた。


そのジャルダンが、荷運び用の一輪車に、根から掘り出した花をたくさんのせ、馬場の前を小走りで行ったり来たりしているのだ。

前庭から大邸宅の裏へと向かっている彼を目で追っていたセシリアは、その目的に気づく。

(そうだったわ。もうすぐ品評会なのね……)


王都では年に一回、この時期に、庭園品評会が開催されている。

これは庭師の腕とセンスを競うコンテストで、受賞することは庭師にとって大変な名誉である。

ひいては、優秀な庭師を雇っている貴族の財力も示すことになるため、貴族も庭師も、静かに闘志をみなぎらせるのだ。
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