自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
庭を作る場所は、各貴族の敷地内であり、品評会当日に審査員が評価して回ることになっている。

不公平にならないよう、決められた面積で、ひとりの庭師が造園するという決まりもあった。


王城の前庭は広大で、伝統的な様式に則って完璧に整えられており、それを崩すわけにはいかないので、品評会用の庭は毎年、大邸宅の裏側に作られている。

ジャルダンは、そこへたくさんの花を運んでいるようだ。

ということは、王城庭師の中からの、今年の出場者はジャルダンなのだろう。

作業用の汚れたズボンをサスペンダーで吊るし、汗水垂らして荷車を押す彼に、セシリアは心の中で激励した。


(頑張って。あなたならきっと、いい評価をもらえるわ……)


その直後に彼女は、パチンと両手を合わせて、「そうだわ!」と大きな声をあげる。

するとツルリーを驚かせてしまった。


「わっ! セシリア様、おやめください。危うく望遠鏡を落とすところだったじゃありませんか」


文句を言ったツルリーが、どうしたのかと尋ねれば、セシリアは嬉しそうに目を輝かせて、たった今、思いついたことを話す。


「わたくし、庭師のジャルダンの邪魔をするわ! 品評会用の庭を、こっそり壊してしまうのよ。これって人助けとは真逆の、かなり悪いことよね?」

「はい? あの、なにを仰られているのかわかりませんが……」

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