自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
目を瞬かせて戸惑っているところを見ると、ツルリーには、なぜ悪巧みをする必要があるのかが理解できない様子である。

フフッと笑うセシリアが、国王から出された人助けの課題を話し、それを逆手にとって人に迷惑をかけて破談にしてもらおうと企んでいることを説明すれば、ツルリーは口をあんぐりと開けて驚いていた。


「いつも優しく清らかで、少し気の弱いセシリア様が、悪事を働こうとなさるなんて……」


それは駄目だと反対されるかと思いきや、「名案です!」と力強く言ったツルリーが、望遠鏡を足元に落として、王女の手を両手で握りしめた。


「ああっ! 今、パリンと鳴ったわ!」


望遠鏡のレンズが割れたことを心配し、慌てて拾おうとしたセシリアだが、ツルリーに握られた両手をブンブンと上下に振られては、それができない。


「セシリア様が悪役令嬢を目指すなんて、似合わなくって面白いです! 成功のあかつきには、きっと結婚話が流れて、この城にいられますね。私、ずっとセシリア様の侍女でいたいので、とっても嬉しいです。これからも一緒に、騎士団長を盗み見しましょうー!」

「え、ええ……」


策を企てたのはセシリアだが、自分以上に張り切るツルリーに、たじろいでしまう。


(なぜかしら、失敗しそうな気がしてきたわ。立ち止まっていたら結婚させられてしまうから、やらないという選択肢はないけれど……)
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