自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
次は三カ月後にまた会いましょうという約束も交わし、その時には婚約式の日取りも決めようという話になっていた。

婚約式が済んでしまえば、一年とかからずに輿入れとなるだろう。


(もう、諦めるしかないのよ……)


セシリアは、一層強くドレス生地を握りしめる。

どうしても嫌だという感情が湧き上がる、自分の心を説得しようと必死であった。


「それでは、そろそろお暇いたします。国王陛下ご夫妻、並びにセシリア王女におかれましては、貴重なお時間を頂戴いたしまして、厚くお礼申し上げます」


立ち上がった使者は深々と頭を下げ、執事が開けたドアの方へと歩き出した。

見送りのために、国王夫妻も立ち上がる。

皆が廊下へ出ていったが、セシリアだけは椅子に座ったままである。

見送らなければと思っても、どうにも立ち上がる気力が湧かず、膝の上に重たいため息を落としていた。


(愛しいあの方への想いを、消さねばならない時がきたのね。でも、私にできるかしら? こんなにも近くにいる人を、忘れられるのかしら……)

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