自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
靴屋に感謝されても困ります
◇◇◇
ジャルダンの窮地を救ってしまった日から五日が過ぎた夜。
セシリアは自室にて晩餐のお召し替え中である。
サーモンピンクの豪華なイブニングドレスを纏ったら、鏡台の前に座り、艶やかな胡桃色の髪をカメリーに梳かしてもらう。
王族の晩餐はいつも二十時からと決まっていて、家族のみの食事であっても着飾るのは、貴族として当然のマナーであった。
「サイドを編み込んでから、ひとつにまとめる形でよろしいですか?」と、事務的な口調で問いかけるカメリーに、セシリアは半ば上の空で「ええ……」と返事をする。
鏡に映る浮かない表情をした自分と視線を交え、心は悩みの中を彷徨っていた。
(誰かの邪魔をするのは諦めようかしら。悪い娘だと、クロードさんに思われたくないもの……)
セシリアが人助けの課題に挑む間、国王から見守り役を命じられたクロードが、よく彼女の視界に映り込んでくる。
今日も邸宅内の廊下と、階段、それと勉強を終えて図書室を出たところで見かけた。
いつもならクロードに会えた喜びに胸を熱くするセシリアであるが、見張られていると思えば困るばかり。
庭師ジャルダンの邪魔をするのは失敗したので、次のターゲットを探そうとしても、クロードに嫌われたくないという恋心が、それを思いとどまらせていた。
ジャルダンの窮地を救ってしまった日から五日が過ぎた夜。
セシリアは自室にて晩餐のお召し替え中である。
サーモンピンクの豪華なイブニングドレスを纏ったら、鏡台の前に座り、艶やかな胡桃色の髪をカメリーに梳かしてもらう。
王族の晩餐はいつも二十時からと決まっていて、家族のみの食事であっても着飾るのは、貴族として当然のマナーであった。
「サイドを編み込んでから、ひとつにまとめる形でよろしいですか?」と、事務的な口調で問いかけるカメリーに、セシリアは半ば上の空で「ええ……」と返事をする。
鏡に映る浮かない表情をした自分と視線を交え、心は悩みの中を彷徨っていた。
(誰かの邪魔をするのは諦めようかしら。悪い娘だと、クロードさんに思われたくないもの……)
セシリアが人助けの課題に挑む間、国王から見守り役を命じられたクロードが、よく彼女の視界に映り込んでくる。
今日も邸宅内の廊下と、階段、それと勉強を終えて図書室を出たところで見かけた。
いつもならクロードに会えた喜びに胸を熱くするセシリアであるが、見張られていると思えば困るばかり。
庭師ジャルダンの邪魔をするのは失敗したので、次のターゲットを探そうとしても、クロードに嫌われたくないという恋心が、それを思いとどまらせていた。