自称・悪役令嬢の華麗なる王宮物語-仁義なき婚約破棄が目標です-
応接室に残っているのは、セシリアだけである。
ドアは開けられたままにされており、彼女は廊下をじっと見つめていた。
すると、ドア横からひょっこりと顔を覗かせる人が現れた。
長身で、細身ながらも逞しい筋肉質の体躯をした、見目好い青年だ。
銀刺繍の施された黒い騎士服と、ロングブーツを身につけた彼は、腰に剣を携え、騎士団長の階級章を胸に輝かせている。
ダークブラウンの長い髪をひとつに束ね、サラリとした前髪の下には凛々しい眉と、涼しげな薄茶の瞳があり、セシリアに視線を止めると、なぜ応接室に残っているのかと、不思議そうな顔をした。
一歩横にずれ、その姿の全てをドア口に現した彼に、セシリアの鼓動が跳ねた。
使者の訪問中、護衛としてドア横に控えていた彼こそが、セシリアの長年の想い人、クロード・ハイゼン。
二十六歳の、若き王城騎士団長であった。
彼が眉を寄せたのは、セシリアを心配してのことのようだ。
「どうなさいました? ご気分が優れないのですか?」と少し低めの響きのよい声で問いかけられ、セシリアは頬を赤らめつつ、慌てて首を横に振る。
「いいえ、わたくしは元気です。使者の方が帰られて、緊張が解けたので、ぼんやりしていただけなんです」
ドアは開けられたままにされており、彼女は廊下をじっと見つめていた。
すると、ドア横からひょっこりと顔を覗かせる人が現れた。
長身で、細身ながらも逞しい筋肉質の体躯をした、見目好い青年だ。
銀刺繍の施された黒い騎士服と、ロングブーツを身につけた彼は、腰に剣を携え、騎士団長の階級章を胸に輝かせている。
ダークブラウンの長い髪をひとつに束ね、サラリとした前髪の下には凛々しい眉と、涼しげな薄茶の瞳があり、セシリアに視線を止めると、なぜ応接室に残っているのかと、不思議そうな顔をした。
一歩横にずれ、その姿の全てをドア口に現した彼に、セシリアの鼓動が跳ねた。
使者の訪問中、護衛としてドア横に控えていた彼こそが、セシリアの長年の想い人、クロード・ハイゼン。
二十六歳の、若き王城騎士団長であった。
彼が眉を寄せたのは、セシリアを心配してのことのようだ。
「どうなさいました? ご気分が優れないのですか?」と少し低めの響きのよい声で問いかけられ、セシリアは頬を赤らめつつ、慌てて首を横に振る。
「いいえ、わたくしは元気です。使者の方が帰られて、緊張が解けたので、ぼんやりしていただけなんです」