鳴る星の彼方
憂鬱な気分を引きずりながら、でも意思に反して着いてしまったクラスのドアを、極力音を立てないようにそっと開ける。
けれど努力虚しくドアは音を立てて開いてしまい、中にいた何人かの視線が集まった。

一瞬、気まずい空気が教室に満ちる。

「おはよー!!」

その空気を一瞬で散らしてくれたのは、絵里だった。
絵里の元気な挨拶に、クラス内のみんながほっとしたような笑顔で返事を返す。

「入らないの?浅本さん」
「は、入る」

さっとドアをくぐり席に着いた私は、まるで外界との繋がりを断つみたいに教科書を広げて、ガリガリと勉強を始めた。

こうしていれば、何も感じなくて済む。
ひそひそと話す声や、視線は。

そう、だったはずなのに。

「おはよ、浅本さん!今日も勉強してんの?」
「……」

私の平穏を崩すのは、いつだって朝倉くんだ。

「ねぇ浅本さん、今日の国語の宿題、めっちゃくちゃむずくなかった?俺すっごい時間かかったんだけど!」
「……」
「大体、『登場人物の心情は?』とか聞かれても分かんないし!って感じじゃない?だって俺、登場人物じゃねーしって思っちゃうしさー」
「……」
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