初めまして、大好きな人
「どこ見てんの」
「べ、別に」
「波留、楽しい?」
「う、うん。楽しい……」
「そっか。ならいいんだ」
視線を尚央の顔に移す。
尚央は私を見ると嬉しそうに笑って目を閉じた。
するとすぐにそれに気付く。
瞼の裏っていうの?いや、違うか。
目を閉じると分かる。
右眼の奥二重のところにホクロが一つある。
それを見つけたとき、何故か嬉しかった。
普通じゃ分からないこと。
多分本人も気づいていないこと。
それを知れた喜び。
私はすぐにノートを開いてメモを取った。
忘れてしまわないように。
嬉しくって、すぐにこの発見を伝えたくて、
言おうと思ったけれど黙っておくことにした。
しばらくは一人だけの秘密にしておこう。
いつか自慢げに教えてやるんだ。
……でも、いつかっていつ?
この先私は、この人とこうして一緒にいるのかな。
尚央が覚えていても、私が覚えていなくちゃ
こうして会うこともできないんだよ。
あの喫茶店に行かなかったら尚央には会えないんだよ。
当たり前のように明日があると思ってしまう自分に嫌気がさした。
この時間は、当たり前なんかじゃないのに。