初めまして、大好きな人



「誰のことを思い出した?」


「お父さんと、お母さん」


「スパゲティ、思い出なのか?」


私がゆっくりと頷くと、尚央は「そっか」と短く言った。


冷たい風が吹く。


最初は寒かったけれど、
尚央が私に上着を貸してくれたから、全然寒くなかった。


「ごめんな。辛かったら答えなくていい。
 お父さんとお母さんは、いないのか?」


「……死んじゃったの。五か月前に」


「事故?」


「うん。私も一緒に車に乗っていたの。
 私だけ助かって、だけど私はこんな病気になってそれで……」


また、じわりと涙が滲む。


改めて口に出して整理すると、泣けてくる。


どうして私は、こんなことになったのだろうか。


その疑問だけが頭をぐるぐると回っていて仕方がない。


言葉を区切ると、尚央はうんと頷いた。


「ゆっくりでいいよ。辛かったら止めていいから」


「お父さんとお母さんがいなくなったなんて信じられなくて、
 でも前を向いていかなくちゃいけないでしょ?
 だから無理やりにでも納得して、
 思い出さないようにしていたのに、
 ふとした時に思い出しちゃって。


 忘れたいのにこれだけは忘れられない。
 忘れなくちゃいけないことは忘れないのに、
 忘れたくないことは全部忘れてしまう」



早口で一気に言うと、尚央は私の背中をさすった。


ゆっくりと背中を撫でる手が優しくて、また泣きそうになる。


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