初めまして、大好きな人
私と尚央は手を繋いで駐車場まで戻った。
尚央の大きな手が私の小さな手を包み込む。
なんだかお父さんと歩いているようで懐かしかった。
尚央ってお父さんみたい。
ちょっと若いお父さんだけど。
駐車場に着いて車に乗り込むと、
尚央はゆっくりと車を動かした。
車内はやっぱり煙草の匂いがして、
聞いてみたら尚央は普段、煙草を吸うらしかった。
どうしてその吸っているところを見かけないんだろうと思う。
考えていると、見透かしたように尚央は言った。
「波留の体に良くないから、
波留といる時は吸わないって決めてあるんだ」
「そうなの?吸ってもいいのに」
「ダメ」
「ふーん」
変なこだわり。でもすごく紳士的。
私の体を考えてのことだったんだね。
なんだか納得した。
尚央ならそう言うよね。
それにしてもヘビースモーカーだなんて驚き。
これもノートにメモしておこう。
「はい、着いた」
車がヴァポーレ近くの駐車場に着いて、私たちは車を降りた。
鍵を閉めて二人並んでヴァポーレまで歩く。
お店の前まで来ると、尚央はうーんと唸った。
「確か、こっちだったよな」
「うん。覚えているの?」
「任せろ。それくらい余裕だよ」
また出た、大人の余裕。
なんだか格好いいな。
尚央を見上げると、尚央はにっこりと笑って私の頭を撫でた。
ぐしゃぐしゃっと乱暴に撫でられた頭はボサボサ。
それでも嫌な気はしなかった。
尚央に手を引かれて施設までの道を歩く。
時折ケータイをいじりながら、
尚央はどんどん進んでいく。
本当に任せていてもいいのかもしれない。
そう思って黙ってついて行ったら、
すぐに施設に着いた。