初めまして、大好きな人
庭には施設長がいて、私たちを見ると微笑んでくれた。
眼鏡の奥の瞳が優しい。
雄介は施設長に元気に挨拶すると、
学校に遅れるからと言って走って行ってしまった。
「お出かけかい?」
「うん」
「今日も喫茶店に行くのかな?」
「うん」
とりあえず私は、このノートに沿って
同じ行動を取ることにした。
喫茶店に行って同じことをしていれば、
何か思い出すかもしれない。
六日も同じことを繰り返しているんだから
今日だって出来るはずだよね。
施設を出て、ノートの記載通りに歩いていくと、
すぐに喫茶店「ヴァポーレ」は見つかった。
お洒落なお店だった。
カランコロンと音を立てて扉を開けると、
ポニーテールの女の店員さんがにこやかに出てきて、
「いらっしゃいませー」と言った。
好きな席へと言われた私は一番奥の窓際の席を選んで座った。
店員さんが可愛らしいグラスに入ったお水を持ってきて、
「いつものですね」と聞く。
私はとりあえず、頷いておいた。
ノートを広げて、そこに書いてある文字を見つめる。
これが本当ならここでショコラミントが出てくるはずだ。
しばらく待っていると、店員さんが飲み物を運んできた。
一口飲んでみるとビンゴ。
それはショコラミントだった。
すごい。全部本当なんだ。
そう思ったらなんだか面白いと思った。
過去のことを綴る日記なのに、
未来のこと書いてある未来日記のように思えていた。
と言っても、繰り返せるのはここまでなんだけど。
ええっと、ナニナニ?
ここらへんで確か男の人が出てきて……。