初めまして、大好きな人
尚央はいつの間にか運ばれていた飲み物を飲み干した。
私も慌ててショコラミントを飲み干す。
口元を拭って尚央を見ると、
尚央はうんと頷いて立ち上がった。
伝票を私の分まで持つと、レジに向かう。
慌ててお金を出そうとすると尚央に止められた。
「ここは黙って奢られるのが女の子だぞ」
そうなの?
でも、何もせずにしれっと会計をしてもらうなんて
どうかと思うんだけど。
奢られるのなんてきっと当たり前じゃないんだから。
だから私は奢られるっていうのは苦手だ。
普段奢られるなんて滅多にないことだけど。
会計を済ませて一緒に店を出ると、
尚央は私の手を握った。
大きくて少し冷たい手。
冷たいはずなのに、何故だかとても温かく感じる。
その冷たさが心地よかった。
「ねぇ、どこに行くの?」
「ん?今日は車じゃなくて歩きだけどいいか?」
「うん。いいけど……どこに?」
「秘密」
歩きってことは近いのかな。
どこに行くんだろう。
秘密って言われると気になるんだよね。
もったいぶらないで教えてほしい。
尚央は私の手を引いて歩き始めた。
周りをきょろきょろ見渡しながらそれについて行く。
しばらく歩くと、ある建物が見えてきた。
それが気になってずっと眺めていると、
どうやら尚央の目的地はそこだったらしく、
入り口の前で止まった。