初めまして、大好きな人
「綺麗だろ?」
小声でそう聞いてくる尚央。
「うん。とっても」
私も小声で、答えた。
「星、好きかなって思って。
夜だとお前連れ出せないしちょうどいいかなってさ」
「ありがとう」
「知ってるか?星って自分の大事な人たちの光なんだぞ。
ご先祖様や亡くなった大事な人たちの魂が、
星となって光ってるんだ。
だから、波留の父さん母さんもきっと、
星になって波留を見守ってくれているんだよ」
「えっ?」
「前向性健忘。毎日同じ現実を突きつけられて
毎日辛い思いをしている波留だからこそ、
今これを見てほしくて。
大丈夫。お前の親は
いつでもお前のそばにいるよ。
みんなが波留を見守っている。
だからこれからは楽しく生きていけるよ」
きゅっと、さらに強く私の手を握る。
私も弱弱しく握り返した。
唇をかみしめて星を見つめる。
思わず泣いてしまいそうだった。
私が欲しかった言葉をくれた。
お父さんとお母さんは私のそばにいる。
みんなが私を見守っている。
だから大丈夫だよ。
きっと、楽しい未来が待っている。
そう言われて、私は嬉しかった。
前向性健忘になって辛いことばかりだけれど、
その中にも些細な良いことがあるんだ。
こうして尚央と出会えたこと。
それだけはとてもいいことで、
素敵な出会いだと思えた。