初めまして、大好きな人



カルロスはその次の日、
傘を片手に彼女を探した。


学校の中で名前も、どのクラスかも分からない女の人を探すことは
容易ではなく、カルロスは何日も何日も探した。


「あの!ちょっといい?」


ようやく見つけたのは、図書室だった。


リザは分厚い本を静かに読んでいて、
カルロスに話しかけられるときょとんとした様子で彼を見た。


カルロスは傘を差し出して彼女に言った。


「傘、ありがとう。君、名前は?」


カルロスの言葉に、リザは目をぱちくりさせた。
そして小さく笑うと、リザは静かに名乗った。


それからカルロスとリザはよく話をするようになった。


実は同じ授業をとっていたとか、趣味が合うだとか、
急速に二人は仲良くなっていく。


リザはいつも一人でいて、時々憂い顔で
窓の外を見つめてはため息を漏らしていた。


そんなリザを、カルロスは守ってあげたいと思うようになる。


そんな矢先、突然リザとの連絡が取れなくなる。


そんなある日、バスケの試合中に足を怪我したカルロスは
中央病院へと運ばれた。


治療をしてもらって、会計を済ませようとした時だった。


リザの姿を見つけた。


病衣姿の彼女は点滴をカラカラと押していて、
食堂へと向かっていた。


カルロスはそれについて行く。


一人で席に座り、本を読み始めた彼女に、
カルロスは話しかけた。


「リザ。ここで何をしているんだ?」


「あっ……、あなたこそ、どうしてここに」


「僕はちょっと怪我をしてね。それより、
 君は今までどうしてたんだ?
 病衣ってことは、入院でもしているのか?どうして」


カルロスが問いただすと、
リザは目を伏せて静かに微笑み、それから言った。







「私、もうすぐ死ぬの」








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