Oni Jo-shi steals my heart.
Oni Jo-shi steals my heart.
「この……鬼っ! 悪魔っ! イケメンならなに言っても許されるなんて思わないでよねっ!」
二月三日、節分。誰もいない夜のオフィスで、私はひとり豆を投げていた。
そう、にっくき高築課長の椅子めがけて。
椅子の背には、豆を買ったときにおまけでついていた鬼のお面をテープで貼り付けてある。
「鬼は~外!」
ただひたすら悔しい思い、腹立たしい気持ちを込めて、紙のお面に豆を投げつける。
パチン、パチン、と豆が紙を打つ小気味いい音に、ほんの少しだけ慰められて、私は大きく息を吐いた。
数時間前、高築課長に言われた言葉が耳に蘇る。
私がデスクでパソコンに向かっていたら、課長が紙の束を無造作にデスクに置いた。私が一週間かけて練り上げた、渾身のイベント企画書だ。
「ダメだ。ボツ」
開口一番、投げられた厳しい言葉に、私は泣きたい気分になった。一週間、寝る間も惜しんで考えたのに。
「……どこがいけなかったんでしょうか」
「全部だな」
課長が低い声で続ける。
「おまえがこの製品を好きだということはよく伝わってくる。だが、それだけだ。こんなのはただの独りよがりだ。なんのためのイベントか、誰のための企画か。そのくらい考えられないで、この課でやっていけると思うなよ」
二月三日、節分。誰もいない夜のオフィスで、私はひとり豆を投げていた。
そう、にっくき高築課長の椅子めがけて。
椅子の背には、豆を買ったときにおまけでついていた鬼のお面をテープで貼り付けてある。
「鬼は~外!」
ただひたすら悔しい思い、腹立たしい気持ちを込めて、紙のお面に豆を投げつける。
パチン、パチン、と豆が紙を打つ小気味いい音に、ほんの少しだけ慰められて、私は大きく息を吐いた。
数時間前、高築課長に言われた言葉が耳に蘇る。
私がデスクでパソコンに向かっていたら、課長が紙の束を無造作にデスクに置いた。私が一週間かけて練り上げた、渾身のイベント企画書だ。
「ダメだ。ボツ」
開口一番、投げられた厳しい言葉に、私は泣きたい気分になった。一週間、寝る間も惜しんで考えたのに。
「……どこがいけなかったんでしょうか」
「全部だな」
課長が低い声で続ける。
「おまえがこの製品を好きだということはよく伝わってくる。だが、それだけだ。こんなのはただの独りよがりだ。なんのためのイベントか、誰のための企画か。そのくらい考えられないで、この課でやっていけると思うなよ」
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