略奪的なその恋に、本気の愛を見つけた
私は意を決して正広に電話をした。
数回のコールの後、「どうした?」と呑気な声が聞こえる。

ああ、ダメだ。
もう声すら、聞きたくないと思う。
私は重症だ。

私は震えそうになるのをぎゅっと堪えて、深呼吸をしてから、言った。

「私、結婚をやめたい。」

「えっ?何で?」

危機感のない正広の声が聞こえる。

「いろいろ、不満が募って、…もう無理なの。」

「………。」

しばらく嫌な沈黙が流れる。
一呼吸置いた後、正広が困惑した声で言った。

「親には何て言うんだよ?」
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